華西村(人口3万人余)は天下一の村とも評され、指導者の先見性と機智に富んだ村の経営と村民の努力により、現在、社会主義国の中で最も村民が豊かで幸福になった模範的な地域として、中国国内はもとより世界的に有名になった注目の村を視察しました。
華西村は、江蘇省江陰県にあり、揚子江デルタの中部に位置し、上海の虹橋空港から高速道路を西へ約2時間走ると、緑の中を真新しい舗装道路、欧州風の別荘と見間違うような3階建ての住宅が整然と並んで中心部にはホテルや飲食店が入った高層ビルが建ち並んでいます。
昨年1年間で約200万人が見学に訪れており、そのうち約5%が外国人だそうです。
最初に村に入るのに見学料として1人あたり130元(2000円)の入場料を課せられました。
最初に華西農民公園のホール(300人位収容)に案内されました。
呉仁宝氏(82)による村の紹介から始まり、私達は1番前列の席で、各視察団体の紹介も敬意の表れか、2番目に日本の福井県から一行が見えていると紹介されました。
次に村や民族の歴史をたどる 歌舞、さらには雑技団のショーがあり、民族衣装で踊る女優達を見ていると、TVで見る北朝鮮の喜び組に似た感じも受けました。
そして、40分くらいのショーが終ってからも、モンゴルの一行様に呉氏が写真撮影に応じてられて、私達との記念撮影も一人10元の商魂たくましさに唖然としました。
一番良かったのは、華西村のナンバー2である周副書記(呉氏の4男の子供の妻)に質疑応答の形式で話しが聞けたことで、内容は以下の通りです。
五十数年前 呉仁宝氏の「共同富裕(共に豊かになろう)」というスローガンの下、文化大革命の嵐が吹き荒れた1970年代、中国全土が政治運動に明け暮れる中、金属加工工場を創設しました。
呉氏の指導者としての先見性は、いち早く政治的リスクを冒してまで、工業を始めた事が今日の成功につながります。
1961年 村が建設された当時は、面積は0.96平方キロメートル、全人口は600人余り、2001年からは、付近の村々とともに豊かになるため、周辺の20の貧しい村を合併し、大華西村として面積は、35平方キロメートルに拡大し、人口は3万人余りに増加し、58の企業、60億元あまりの固定資産を持つといいます。
現在 小規模な工業から発展した鉄鋼業、紡績業、旅行業が三大支柱の産業で、海運業にも参入し、農業収入は1%以下となりました。2008年の総売り上げは約5百億元(約6千5百億円)で、村民の平均所得は農民の全国平均の40倍だそうです。
村民は村の株を持ち、別荘はすべて与えられた村民の住宅で平均面積は400平方メートル以上、ほとんどの家庭は高級車を複数台所有しています。
独自の年金制度や医療保険制度があり、大学までの教育費、年1回の海外旅行の費用も村が負担しています。
私が、質問した中で、少子高齢化(中国の一人子政策)が進んでいるでしょうが、働けない家族を村として、どのように面倒を見ているのかとの質問にびっくりした答えが返ってきました。
女性は50才男性は55才が一応の定年だが、働ければ働けるし、年金もあり、株主配当を貰えるという事です。
80歳以上のお年寄りがいる家族一人につき年間100元(1500円)を、90歳以上のお年寄りがいる家族一人につき年間1000元(1万5千円)を、100歳以上のお年寄りがいる家族一人につき年間10000元(15万円)を渡すそうです。
実際に37人の家族トータル370万元(555万円)もの巨額を渡している例があるというのですから、華西村の財力が半端じゃない事が分かります。
これなら、お年寄りを大切にするだろうし、老後の先行き不安で自殺者や介護疲れから身内による殺人者が増加している社会問題を抱える日本は、福祉の充実を急ぐべきと強く思いました。
さらには、寧夏回族自治区や、黒竜江省にも、「華西村」を興し、幹部、資金、技術、プロジェクト項目など各方面において大きな支持を与え、これらの貧困地区が早期に富裕の道を歩めるよう助けているようです。
また、全国各地から村の幹部5万人余りが華西村を研修に訪れ、彼らの進んだ経験を学んでいます。
中国の大部分の農村は貧しく遅れた状態の中で、社会主義の新農村を建設し、華西村は現在120人の指導者により民主的な会議を重ね、みんなで村の政策を実行していきます。
私は豊かさを共有する社会主義の目指す究極のユートピアが目に焼きつきカルチャーショックを受けました。
今後は、国内外の観光誘客の為に20億元〈300億円〉の巨額を投入し、大型複合施設として空中華西大楼ビル建設中で、このシンボリックな建物の完成後に再度訪れ見てみたいと思いました。
一方で、私達のガイドさんいわく長年の奮闘で村民は豊かになったが、新住民には旧村民のような手厚い福利厚生はなく、村民の様な待遇を得るには高学歴や特別な才能など、村に必要な人材でなければ認められないらしく、村内の格差が問題とも聞きました。
現在の中国は平等を唱えた社会主義国家とは程遠く、バブル絶頂期で経済大国になり、貧富の格差は大きな社会問題でもあります。
今回の視察は、日本のTVでも紹介されるくらい有名になった天下第一村・華西村は思っていた以上の凄さに感嘆したと同時に、住民生活の安定には経済が良くなくてはいけないことを痛切に感じました。
そして、国も自治体も20年、30年後に向かう姿(長期ビジョン)を明確にして政治を行なうべきと再認識しました。